日常が崩れるとき…プロローグ

常磐悠







3年生が卒業を目前に控えたこの時期、暦の上では春と言っても、まだまだ肌に厳しい寒さを感じさせる。

特に朝の寒さは厳しい、しかし――――

「学校に遅れるー!!」

登校の時間にしては、少々遅い時間。既に学校のチャイムも朝から何度目かの役目を果たして、今は2限目が始まって中頃の時間だろう。

そんな中、学校までの道を全速力で走っている少女には、寒さを感じている余裕なども無かった。

(どうして、起こしてくれなかったんだ?)

少女は理由を考えるが、これは今日に始まった事では無かった。最近どうしてか、朝は寝起きの悪いはずの同居人が朝起きるのが早くなって、今までとは立場が逆転してしまっている。

(せめて、起こしてくれたって良いのにな)

頭の中で色々と考えながら全速力で走っていれば、当然ながら前方不注意になるわけで――――

「きゃっ」

電信柱への熱烈なアタックをしてしまった。

少女はとても痛くて、しばらくその場で固まっていたが、思い出したかのようによろよろと立ち上がって、衝撃で落ちてきた雪を払った。

(良かった、周りに人が居なくて……?)

考えてみれば、周りに人が居るような時間ならばこうやって、走って電信柱にぶつかる事も無いわけで――――

『はぁ』っと空に白いため息を吐きつつも、再び学校へと走っていく。






結局少女が学校に着いたのは、ちょうど2限の終了のチャイムと同時だった。

理由はどうあれ、これで5回連続の遅刻。これでめでたく職員トイレの掃除をするのは自分となったわけだ。

こんなにもドタバタとした毎日。

それが、最近少女―――相沢祐美―――が手に入れた日常だった。



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